マクロで撮ろうひまわり!|クニさんの季節の花レシピ

マクロで撮ろうひまわり!|クニさんの季節の花レシピ

はじめに

梅雨が終わって本格的な夏が始まるころ、もういくつ寝ると楽しい楽しい夏休み。
夏休みといえば、ひまわり。夏を代表する花ですよね。
夏になると必ずひまわりを撮りたくなりますが、毎年同じような写真になりがちだなぁ、と思っている方も多いのではないでしょうか。
一面のひまわり畑に咲くひまわりと青空をバックに……。という定番的な撮り方もちろんいいのですが、ぜひ今年の夏はマクロレンズや望遠レンズでひと味違ったひまわり写真を撮影してみませんか?

心に触れた主役を見つけよう

広いお花畑に咲くたくさんのひまわり。
漠然と眺めていても、どこをどう撮っていいのか迷いますよね。
そんなときは目の前の風景をよく観察して、何かしら心に引っかかったものを主役にしましょう。

■撮影機材:OM SYSTEM OM-1 + M.ZUIKO DIGITAL ED 90mm F3.5 Macro IS PRO
■撮影環境:絞り優先AE・F3.5(+1.0)・ISO200・ピクチャーモード Portrait

すらっと背が高い一輪のひまわりが目に留まりました。
姿勢良くまっすぐ立ってこちらを見つめているかのようです。
そのまま撮ったのでは周囲の花や茎などに埋もれて、肝心の主役が目立ちません。
そこで手前の花を前ボケに使い、主役を邪魔する煩雑なものを隠します。
密集している花と花との隙間から主役の一輪が顔を出すようなポジションを選び、見たときにパッと主役に視線が行くようにしています。

いろいろな角度から観察しよう

ひまわりを撮ろうとした時、まずは先ほどの写真のように正面から捉えるのが普通ではないかと思います。
もちろん、一番ひまわりらしいのは花を正面から見た姿なので、正面から撮るのは間違いではありません。
でもそれだけでは、よくある写真で終わってしまいがち。
正面からだけでなく、横から上から下から、いろいろな角度から観察してみましょう。

■撮影機材:OM-D E-M5 Mark III + M.ZUIKO DIGITAL ED 60mm F2.8 Macro
■撮影環境:絞り優先AE・F2.8(+1.0)・ISO200・ピクチャーモード Portrait

ひまわりの背後に回り込んで撮影しました。
真後ろから花びらにピントを合わせることで手前にある総苞(緑の部分)が前ボケになり、面白い効果を出してくれました。
午前中の撮影なので太陽は正面の方向にあります。
そのため逆光の光が花びらを透かして透明感のある瑞々しいイメージになりました。

花をいろいろな方向から観察することは大事なのですが、そのときに入ってはいけない場所に足を踏み入れないように注意しましょう。
群生しているお花畑だと、ロープが張ってあって裏側に回れないことも多いかもしれません。
そんなときは諦めて他の花を探すか、見えるポジションからなにか別の撮り方ができないかを吟味してみましょう。

クローズアップでボケを活かそう

■撮影機材:OM SYSTEM OM-1 + M.ZUIKO DIGITAL ED 90mm F3.5 Macro IS PRO
■撮影環境:絞り優先AE・F3.5(+1.7)・ISO200・フィルムシミュレーション Portrait

これは花を真横から捉えた一枚です。
黄色い部分は花びら。
奥側の花びらの上の部分にピントを合わせたため、手前の花びらが大きくボケて不思議な描写になりました。
マクロレンズで近づき、絞り開放で撮影することで得られたボケ効果です。
こんなボケを生かした表現が、マクロ撮影の最大の面白さだと思っています。

この写真、一見するとひまわりを撮ったとわからないかもしれませんね。
花の撮影というと、花の姿をわかりやすく入れて、なんの花を撮ったのかわかるように写さなければならない、そう思っている方もいらっしゃるかもしれません。
でもそんなことまったく気にしなくてOKです!
花全体の姿を写す必要はないですし、なんの花を撮ったのかわからなくても大丈夫。説明なんていらないんです。
いろいろな角度から観察してみて「あっ!これ面白い!」って感じて撮ることが大事なんです。

デザイン的に切り取ろう

ひまわりと言うと一つの大きな花のように思われるかもしれませんが、実は小さな花がたくさん集まってできています。
中心の部分を管状花(または筒状花)、周囲の花びらのような部分を舌状花といいます。
めしべ、おしべが出てきて受粉するのは、中心の管状花の部分です。
その管状花の部分を真正面からクローズアップしました。
まだめしべやおしべが出てきていない、蕾の状態です。

■撮影機材:OM SYSTEM OM-1 + M.ZUIKO DIGITAL ED 90mm F3.5 Macro IS PRO
■撮影環境:絞り優先AE・F3.5(+0.7)・ISO200・ピクチャーモード Portrait

とんがり帽子のような形をした蕾がリズミカルに並んでいる様子が面白く、その部分だけをデザイン的に切り取っています。
このときに周囲の花びらなどの余計なものを入れてしまうとそちらに視線を奪われてしまい、面白いと感じた蕾の様子の印象が薄れてしまいます。
そうならないように最大限にクローズアップして蕾の部分だけで構成し、リズミカルな動きが感じられるように少し斜めに傾けた構図としています。

物語をイメージしよう

■撮影機材:OM SYSTEM OM-1 + M.ZUIKO DIGITAL ED 30mm F3.5 Macro
■撮影環境:絞り優先AE・F3.5・ISO200・ピクチャーモード Portrait

こちらの写真も、中心部の管状花をクローズアップしたものです。
今度は蕾ではなく、蕾から飛び出したシベを主役にしています。
シベが眼鏡のようなハートのような、ユーモラスな形になっていてかわいらしいですね。
そのユーモラスなシベをたくさん入れて、小さな子どもたちがどんどん飛び出してきているようなイメージを狙いました。
ここでは広角マクロレンズでクローズアップすることで背景も取り入れました。
丸い光のボケを入れることで、これから育って成長していくシベの明るい未来を表現しました。
このようにクローズアップしつつ背景の状況なども取り入れたい場合は、広角マクロが便利ですよ。

主役を引き立てよう

■撮影機材:OM-D E-M5 Mark III + M.ZUIKO DIGITAL ED 60mm F2.8 Macro
■撮影環境:絞り優先AE・F2.8(+1.3)・ISO200・ピクチャーモード Portrait

たくさんあるユーモラスなシベのうち、一つのシベに注目しました。
中望遠マクロレンズでクローズアップすることで主役のシベ以外が大きくボケて、主役である一つのシベだけを浮き上がらせることができました。
低い位置から撮影して花びらを前ボケとして活かすことで、周囲のシベなど主役の印象を弱めるものを隠し、画面全体をふんわりやわらかくする効果が得られました。
主役を少し右に寄せて傾けることで、シベたちが並んでこちらに歩いてくるような動きを表現しています。

なお、黄色の面積が多いためそのまま撮影すると暗く色が濁ったように写ってしまいます。
そのため、少し多めに露出をかけて明るくなるように撮影しています。

光の輝きを活かそう

■撮影機材:OM SYSTEM OM-1 + M.ZUIKO DIGITAL ED 30mm F3.5 Macro
■撮影環境:絞り優先AE・F3.5(+0.7)・ISO200・ピクチャーモード Portrait

こちらも中心の管状花の部分を真横から切り取ったものです。
晴れた朝、茶色の管状花の先から出た蜜が雫を作っていました。
逆光方向から見ると、その雫が光を反射してキラキラ輝きます。
そのうちの一つの雫にピントを合わせてクローズアップ。
絞り開放で撮影することで、ピントを合わせた以外の雫が大きな光のボケを描いてくれました。
管状花の暗い部分の面積が広くなると重い印象になってしまうため、低い位置から黄色い花びらを前ボケに入れて明るい印象になるようにしています。

レンズの先から花まで数センチぐらいと、かなり花に近づいてクローズアップしているため、三脚を使っての撮影はなかなか難しいかもしれません。
ピント合わせはかなりシビアです。手持ちの場合はしっかりカメラをホールドしてブレを防ぎ、息を止めて慎重にピントを合わせましょう。
炎天下での撮影ですので、あまり長い時間息を止めて倒れてしまわないよう注意してくださいね(笑)

ズームレンズでクローズアップ

■撮影機材:OM SYSTEM OM-1 + M.ZUIKO DIGITAL ED 40-150mm F2.8 PRO
■撮影環境:絞り優先AE・F2.8(+1.0)・ISO200・ピクチャーモード Portrait

小さなひまわりに止まった大きな蝶。
まるで蝶が大好きなひまわりに思いっきり抱きついたかのようで微笑ましいですね。
そんな蝶とひまわりを主役に選びました。
パッと見たときに主役に視線が集まるように、手前の花を前ボケにして周囲の花や葉っぱなどを隠しました。
前ボケの隙間からうまく主役だけが見えるように慎重にポジションを決めています。
ただ、相手は蝶ですのでいつ飛び立ってしまうかわかりません。慎重にしつつもフレーミングや構図を素早く判断して撮影しましょう。

なお、この作品はマクロレンズではなく、望遠ズームレンズで撮影しました。
マクロレンズでは焦点距離が少し短くて近づく必要があったのですが、近づくと蝶が逃げてしまう可能性があるため、望遠ズームに交換し、望遠側(142mm:35mm判換算284mm)の最短撮影距離付近で撮影しています。
なにもクローズアップが撮影できるのはマクロレンズだけとは限りません。
望遠ズームでもこのようにボケをうまく活用しながら最短撮影距離付近で撮影することで、クローズアップ撮影と同じような効果が得られるのです。

おわりに

いつものレンズにマクロレンズを一本加えるだけで、撮影のバリエーションはグンと広がります。
ファインダーを覗きながら、正面だけでなくいろいろな角度から花を見て、いろいろなところにピントを合わせてみてください。
きっと思いもよらない発見がありますよ。

ここに挙げた撮り方はほんの一例です。
いろいろな撮影方法にチャレンジしながらぜひ自分なりの撮り方を見つけてくださいね。

 

 

■写真家:くにまさ ひろし
1971年生まれ。大阪在住。身近にあるちょっとした幸せ「プチ・ハピ」をテーマに、マクロレンズで花や虫たちの小さな世界をふんわりやさしく描く。
各種写真教室では、マクロ撮影の面白さを楽しくわかりやすくお伝えすることを意識している。

写真展 2020年、2022年「花色の息吹」(大阪・東京)、2021年「花の鼓動~Life~」(大阪)、2023年、2024年「Nature Flowers」(東京)
写真集「花色の息吹」(風景写真出版)

日本風景写真家協会(JSPA)会員
一般社団法人 日本写真講師協会認定インストラクター
フォトマスターEX(総合)
カメラのキタムラ写真教室/OM SYSTEMゼミ/富士フイルムアカデミーX/NHKカルチャー/リビングカルチャー倶楽部 講師
クニさんの花マクロ写真塾 主宰

 

 

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