夏が来れば思い出すミズバショウ|上手に撮る方法をプロが紹介 ~吉住志穂~

吉住志穂
夏が来れば思い出すミズバショウ|上手に撮る方法をプロが紹介 ~吉住志穂~

はじめに

“夏が来れば思い出す”の歌い出しで有名な「夏の思い出」は尾瀬の美しい情景が表現されています。その歌詞の中にミズバショウが登場するのですが、尾瀬で開花するのは夏ではなく、5月から6月なのです。真夏にはすでに花の姿はなく、大きな葉っぱだけが残っています。しかし、俳句ではミズバショウは夏の季語とされているので、ミズバショウは夏の花というイメージがあるのかもしれませんね。

ミズバショウの花は変わった形をしていて、白い花びらのように見えるのは苞と呼ばれる葉が変形したもので、中心にある部分が花序という花の集まりです。山地の水辺を好むので、湿地などで見られます。水辺は撮影ポジションが限られますが、レンズの選択やアングルの工夫などでバリエーションを作っていきましょう。

多重露出+ハイキーでさわやかに

■撮影機材:OMシステム OM-1 Mark II + M.ZUIKO DIGITAL ED 40-150mm F2.8 PRO
■撮影環境:絞り優先・106mm・F2.8・ISO200・1/1250秒・多重露出

多重露出機能を使って幻想的に仕上げました。第一露光は普通にピントを合わせて撮り、それに重ねる第二露光は水面の反射をぼかしました。逆光で輝いた部分をぼかせば丸いボケになるので、マニュアルフォーカスで意図的にピントを外し、ボケ画像を作ります。ピントリングを回しながら、程よいボケの大きさになったところで撮りましょう。このとき、望遠系のレンズを使い、絞りは開けた方がよりボケを大きくすることができます。多重露出でシャープな画像とボケの画像を重ねることで、芯はあるのにソフトな印象の作品になります。さらに露出は明るめにし、カスタムホワイトバランスで青みを加えています。

構図を意識してみる

■撮影機材:OMシステム E-M1 Mark II + M.ZUIKO DIGITAL ED 12-40mm F2.8 PRO
■撮影環境:絞り優先・40mm・F2.8・ISO200・1/200秒

水の流れに沿って咲く様子を撮影しました。流れが速いところには見られず、流れの緩い、少し水に浸かるくらいの水際を好んで咲きます。標準に近い焦点距離を選んでいるので、背景がわかる程度のほんのりとしたボケになっています。風景写真的な狙い方ですが、少しぼかすことで奥行きを感じさせることができます。また、構図の一つに「S字構図」というものがありますが、小川の形が「S」になっていて、まさにその構図に当てはまります。ここでは右下から左上、さらにその右上から左上へとS字に画面の流れができています。直線よりも緩やかな奥行き感がありますね。蛇行する道や川を写すときによくみられる構図です。

木道から撮るときのポイント

■撮影機材:OMシステム OM-1 Mark II + M.ZUIKO DIGITAL ED 12-40mm F2.8 PRO
■撮影環境:絞り優先12mm・F5.0・ISO200・1/250秒

広角系の画角でクローズアップしました。遠近感が生まれ、画角の広さから周囲の雰囲気も伝わってきます。しかし、木道が整備されているところでは花に近づけない場合もあります。そんなときには、木道のすぐ近くに咲いている花を選んで、手を伸ばして撮影しましょう。木道はミズバショウより高い位置にあるので、そこから撮ると、花を見下ろすようになるのですが、ライブビューならファインダーを覗かなくてもフレーミングが確認できるので、しゃがんで手をいっぱいに伸ばせば、花と同じぐらいの高さから撮ることができます。望遠を使えばそんな苦労をせずに大きく写すことはできますが、遠近感や背景の広がりが欲しいときは画角の広い焦点距離で撮りたいですね。

風景写真的に撮るときにはPLフィルターを

■撮影機材:OMシステム E-M1 Mark II + M.ZUIKO DIGITAL ED 12-40mm F2.8 PRO・PLフィルター使用
■撮影環境:絞り優先・29mm・F4.5・ISO200・1/200秒

ミズバショウといえば尾瀬が有名ですが、長野県長野市にある奥裾花自然園の大群落は国内随一とも言われています。ミズバショウは数輪ごとに固まって、点々と咲く姿をイメージしますが、ここでは広大な湿地一面に群生しているのが見られます。駐車場から自然園入り口まではシャトルバスに乗るか、平坦な道を歩けばいいので、尾瀬よりもアクセスはしやすいです。木道の途中で足を止め、手前に流れを入れて変化を出しつつ、逆光で光を透過した芽吹きの森を背景に入れました。PLフィルターがあると水面の反射をカットできるので、色が引き締まります。特に風景写真的に花を撮るときは使う場面が多いので、PLフィルターを持っておくといいでしょう。

望遠ズームとテレコンでより大きくぼかす

■撮影機材:OMシステム E-M1 Mark II + M.ZUIKO DIGITAL ED 40-150mm F2.8 PRO・M.ZUIKO DIGITAL 1.4x Teleconverter MC-14使用
■撮影環境:絞り優先・210mm・F4.0・ISO200・1/640秒

クローズアップするので痛みのない、瑞々しい花を選びました。真っ白なので1点でも茶色い部分があると目立つので、状態をよくチェックしましょう。こちらは望遠でのクローズアップですが、大きなボケとすっきりとした背景が魅力です。また、望遠ズームにテレコンバーターを装着しているのは、より大きくぼかしたいのと、よりクローズアップするためです。このレンズとテレコンのセットではテレコンバーターを付けても最短撮影距離が変わらないので、より大きく写すことができます。マクロレンズには及びませんが、機材を減らしつつ花をクローズアップする手段として知っておくといいでしょう。前ボケと背景の水面のボケで挟んだので、やわらかな雰囲気になりました。

背景で状況を伝える

■撮影機材:OMシステム OM-1 + M.ZUIKO DIGITAL ED 40-150mm F2.8 PRO
■撮影環境:絞り優先・150mm・F2.8・ISO200・1/500秒

岸辺に咲くことが多いので、水の真ん中で咲いていることは珍しいです。このポツンとした雰囲気を出すために、空間を広くとって、花はやや小さめに写しました。あえて広がりを出すことで、周囲に花がなく、この一輪だけなのだということが伝わります。しかし、小さく写すだけなら広く撮ればいいのですが、周囲に何もないすっきりとした状況が必要です。ごちゃごちゃした中で花を小さく写しても目立ちませんよね。もし、別の花や葉などが入るようなら、そのときはフレームアウトしましょう。ただし、背景が茶色い沼地だけでは平凡なので、アクセントとして黒く、直線的な木の映り込みを入れました。

逆光を選んでハイキーに仕上げる

■撮影機材:OMシステム OM-1 + M.ZUIKO DIGITAL ED 40-150mm F2.8 PRO
■撮影環境:絞り優先・150mm・F2.8・ISO200・1/200秒

花びらに比べるとミズバショウの苞は厚みがありますが、それでも光に透けると透明感が出て綺麗です。そのため、私は積極的に逆光を選んで撮っています。木道の上からの撮影なのでポジションは限られますが、常に太陽のある方向を見ながら、つまり逆光状態で主役にしたい花を探しました。白く輝く透明感を増幅させるため、プラス2~3EVの露出補正をかけてハイキーに仕上げています。手前にはうっすらと前ボケを入れ、望遠レンズで水面の反射のボケを作り出し、明るく、やわらかく、キラキラと輝く印象になりました。PLフィルターをかければ水面の反射が取り除けるシーンでしたが、反射すると白っぽくなってハイキーな雰囲気になるので、あえて水面の反射を残しています。

ローキーと露出アンダー失敗の違いは?

■撮影機材:OMシステム OM-1 + M.ZUIKO DIGITAL ED 40-150mm F2.8 PRO
■撮影環境:マニュアル露出・150mm・F2.8・ISO200・1/5000秒

ハイキーがあればローキーもあります。マニュアル露出で撮影したので、露出補正したときの数値はわからないのですが、絞り開放のF2.8でシャッター速度が1/5000秒と、かなり速いシャッター速度を選んでいます。そのため、カメラ内にわずかな光しか入り込まないので、暗く写るのです。しかし、ローキーと露出アンダーの失敗写真の違いは何かというと、ハイライトがあって、それがポイントになっているということだと思います。ここではミズバショウと重なる位置に太陽の映り込みを入れて、ハイライトの要素を作りました。花が暗くても明るい背景と重ねれば引き立ちますよね。この太陽の映り込みがなければ、全体に暗いだけの露出アンダーの失敗写真と捉えられてしまったでしょう。

まとめ

身近な花とは違って、高地の湿地に咲くミズバショウを撮るには自然豊かな場所まで出かける必要があります。ですから、その姿に出会えただけでもウキウキします。しかし、ただ記念として撮るだけではなく、作品としてより美しく仕上げる工夫をしましょう。水辺の花は近付きにくいので望遠系のレンズが主になりますが、近づける花があれば広角系のレンズで迫って、周囲の環境を見せてみましょう。また、水の流れを入れたり、水の反射をぼかしたりといった、水辺ならではの背景作りもしていきたいですね。

 

 

■写真家:吉住志穂
1979年東京生まれ。日本写真芸術専門学校卒業。写真家の竹内敏信氏に師事し、2005年に独立。「花のこころ」をテーマに、クローズアップ作品を中心に撮影している。2021秋に写真展「夢」、2022春に写真展「Rainbow」を開催し、女性ならではの視点で捉えた作品が高い評価を得る。また、写真誌やウェブサイトでの執筆、撮影講座の講師を多数務める。

 

 

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