ニコン NIKKOR Z 28-400mm f/4-8 VR|旅も日々も。あらゆるシーンで活躍してくれる超高倍率ズームレンズ

ニコン NIKKOR Z 28-400mm f/4-8 VR|旅も日々も。あらゆるシーンで活躍してくれる超高倍率ズームレンズ

はじめに

2024年4月19日に発売となったニコン NIKKOR Z 28-400mm f/4-8 VRは、フルサイズ機用としてはあまり類を見ない約14.2倍ものズーミングを持つレンズであり、その高倍率っぷりに驚いたのはきっと私だけではないはずです。これまでZシリーズでFX(フルサイズ機)用の望遠域を持つレンズは手頃なものが多くはない中で登場した本レンズ、高画質に期待するレンズではないものの、28mmから途中のレンズ交換が不要なままで400mmという超望遠での撮影までを楽しめる点が、大きな特徴であり魅力です。

本レンズを初めて目にしたときは、やはり400mmまでもの望遠が使えるだけあってしっかりした太さの鏡筒を持つ、ちょっと”いかつい”レンズだな、という印象でした。しかし手持ちのZ 6IIに装着して手に取った途端に思わず「軽っ!」と声を上げてしまったほどで「見た目とは裏腹に軽い」という点が大きなポイントです。これならば十分手持ちで400mmの撮影ができるであろうことは手に取った瞬間から容易に想像できました。今回はそんな「超高倍率ズームレンズ」を連れて、季節柄、近場・関西の桜パトロールを中心に撮影に出かけました。

ズーム倍率約14.2倍!28mmと400mmって、どのくらい?

そもそも、標準ズームレンズの広角側として昔からよく使われている28mmから「超望遠」となる400mmは、それぞれ一体どのくらいの広さ・望遠具合なのでしょうか。同じ場所でいくつかの写真を撮ってみました。

神戸・六甲アイランドの「マリンパーク駅」の少し北側から六甲大橋方面へレンズを向けてみました。地図上で計測してみると1.7kmほどの距離があるのですが、28mmだと画面中央下に小さく見えている六甲大橋の赤い先端がかなり遠く感じられます。一方で400mmだと橋が大きくなるとともに圧縮効果でかなり近く感じられます。またその間に立つ六甲ライナーの橋脚の幅も、28mmだと手前が大きく開いているのに対して400mmとではかなり詰まっており、同じ被写体とは思えないほどです。

■撮影機材:Nikon Z 6II + NIKKOR Z 28-400mm f/4-8 VR
■撮影環境:28mm, F9, 1/640秒, 露出補正 +0.3段, ISO 400, WB 自然光オート, PCスタンダード
■撮影機材:Nikon Z 6II + NIKKOR Z 28-400mm f/4-8 VR
■撮影環境:400mm, F9, 1/500秒, 露出補正 -0.3段, ISO 400, WB 自然光オート, PC:スタンダード

本レンズで何を撮ろうかと考えた時に、真っ先に浮かんだ場所のひとつが動物園でした。こちらの施設ではペリカンが飼育員さんの合図に従って向こう岸から目の前まで一直線に飛んできてくれるイベントがあるのですが、飛び始めたところを400mmで捉えたらすぐに焦点距離を変更。着地するところを28mmで捉えることができましたが、レンズ交換が不要だからこそ撮れた写真です。

■撮影機材:Nikon Z 6II + NIKKOR Z 28-400mm f/4-8 VR
■撮影環境:400mm, F8, 1/1000秒, 露出補正 -2.0段, ISO 640, WB オート, PC:スタンダード
■撮影機材:Nikon Z 6II + NIKKOR Z 28-400mm f/4-8 VR
■撮影環境:28mm, F8, 1/4000秒, 露出補正 -2.0段, ISO 640, WB オート, PC:スタンダード

何か動きものを、と考えてまた伊丹空港の滑走路の端へやってきました。着陸する飛行機を広角側で大きく捉えつつ、人物を入れてそのスケール感を出してみました。そしてそのまま向きを変えつつズーミングで焦点距離を変更し、着地した飛行機を大きく捉える……これがレンズ交換なしに一本で、しかも手持ちで撮れてしまうところに、このレンズの有用性を感じました。

■撮影機材:Nikon Z 6II + NIKKOR Z 28-400mm f/4-8 VR
■撮影環境:28mm, F8, 1/4000秒, 露出補正 -0.3段, ISO 800, WB 自然光オート, PC:スタンダード
■撮影機材:Nikon Z 6II + NIKKOR Z 28-400mm f/4-8 VR
■撮影環境:400mm, F8, 1/2500秒, 露出補正 -0.3段, ISO 500, WB 自然光オート, PC:スタンダード

テレ端400mmの開放F値がF8でも使える、と感じた理由

本レンズは開放絞りがF4-8、つまり28mmの時がF4であり、400mmの時はF8となります。本レンズを一目見て、この開放F値がF8という点が引っかかる……(暗すぎる)という方は決して少なくないのではないでしょうか。そこで、400mm F8のボケ感を検証してみたのですが、結果的に望遠による被写界深度の浅さがあるので、十分使えるという印象でした。

状況説明カットをご覧いただくとわかりますが、しっかり存在感のある柵越しにケープハイラックスを400mmで撮影したところ、見事に柵が消えてくれました。

■撮影機材:Nikon Z 6II + NIKKOR Z 28-400mm f/4-8 VR
■撮影環境:70mm, F8, 1/160秒, 露出補正 -1.0段, ISO 200, WB 自然光オート, PC:スタンダード
柵越しの撮影でも400mmなら柵を気にせず撮影できる
■撮影機材:Nikon Z 6II + NIKKOR Z 28-400mm f/4-8 VR
■撮影環境:400mm, F8, 1/80秒, 露出補正 -1.0段, ISO 200, WB オート, PC:スタンダード

今回の撮影は、チューリップの終わり頃とちょうど桜の時期に重なりました。テレ端の最短撮影距離が1.2mと少し長いので被写体となるお花は選ばなければなりませんでしたが、背景がボケることで被写体が浮かび上がるとともに、F値の小さな明るいレンズには到底及ばないまでもしっかり前ボケもでき、「F8だからボケない」とはなりませんでした。また超望遠ゆえに背景の玉ボケも大きなものとなりました。

■撮影機材:Nikon Z 6II + NIKKOR Z 28-400mm f/4-8 VR
■撮影環境:400mm, F8, 1/800秒, 露出補正 +0.3段, ISO 400, WB 自然光オート, PC:スタンダード
■撮影機材:Nikon Z 6II + NIKKOR Z 28-400mm f/4-8 VR
■撮影環境:400mm, F8, 1/125秒, 露出補正 +1.0段, ISO 640, WB 曇天, PC:ビビッド
■撮影機材:Nikon Z 6II + NIKKOR Z 28-400mm f/4-8 VR
■撮影環境:400mm, F8, 1/320秒, 露出補正 +0.7段, ISO 640, WB 6250K, PC:ビビッド

寄れる!ワイド端での最短撮影距離が20cm

元々、高倍率ズームレンズの最短撮影距離は、同じ焦点距離でも標準ズームレンズや単焦点レンズに比べて長い、つまり被写体に近寄れないことが多く、例えば同じく高倍率ズームレンズである「NIKKOR Z 24-200mm f/4-6.3 VR」の最短撮影距離はワイド端の24mmでも0.5m=50cmとなっています。

そんな中、今回の本レンズはワイド端の28mmの時の最短撮影距離がなんと0.2m=20cm。以前ご紹介した標準ズームレンズ「NIKKOR Z 24-120mm f/4 S」の0.35m=35cmよりも短く、また単焦点レンズ「NIKKOR Z 28mm f/2.8」の0.19m=19cmに引けを取らない、むしろ高倍率ズームレンズでここまで寄れるレンズであることは特筆すべき点のひとつです。

なお、被写体にかなり接近しての撮影が可能となるため、レンズフード装着時にはフードが被写体に接触しないように注意したいものです。

小さな金平糖にピントの合うギリギリまで寄って撮影しました。最大撮影倍率は0.35倍、センサー上で実物の1/3程度の大きさでの撮影が可能です。

■撮影機材:NikonZ 6II + NIKKOR Z 28-400mm f/4-8 VR
■撮影環境:28mm, F5.6, 1/50秒, 露出補正 +1.0段, ISO 800, WB オート, PC:スタンダード

小さなお花にできるだけ寄って28mmで撮影してみました。広角ということもありどうしても周囲が多少流れる感じにはなりますが、背景に奥行きがあるとしっかりボケることがわかります。

■撮影機材:Nikon Z 6II + NIKKOR Z 28-400mm f/4-8 VR
■撮影環境:28mm, F4, 1/1000秒, ISO 400, WB オート, PC:スタンダード

雨の夜、持っていたビニール傘の雨粒にピントを合わせることで街の灯りをボカしてみました。最短撮影距離が近いレンズだからこそ撮れた一枚です。

■撮影機材:Nikon Z 6II + NIKKOR Z 28-400mm f/4-8 VR
■撮影環境:28mm, F4, 1/100秒, 露出補正 -0.3段, ISO 6400, WB オート, PC:スタンダード

こちらは最短撮影距離まで近づいているわけではないものの、寄れるからこそちょっと引いて、また画角が広いゆえに大きなお皿に盛られたお料理と周辺のものまでを収めることができました。

■撮影機材:Nikon Z 6II + NIKKOR Z 28-400mm f/4-8 VR
■撮影環境:28mm, F4, 1/250秒, 露出補正 +0.3段, ISO 250, WB 自然光オート, PC:スタンダード

安心の手ブレ補正と防塵防滴性能

開放F値がテレ端ではF8であったり、また望遠になればなるほど手ブレもしやすくなることから、正直なところ当初はロケーションを選ぶレンズではないかという印象でしたが、レンズシフト方式VR機構により5.0段(シンクロVR対応カメラとの組み合わせでは5.5段)の手ブレ補正効果が得られるとのこと。また、レンズ鏡筒の可動部などにシーリングを施して防塵・防滴性能に配慮した設計であるということで、お天気が崩れる予報の日に夕暮れの街スナップへと出掛けてみました。

4月半ば、夕方6時半ごろのかなり薄暗くなってきた時間と、そのあと暗くなったのちに突然やってきた雷雨の最中、そして雨上がりにそれぞれ撮影。いずれもシャッター速度が遅くなるシチュエーションですが、ISOを最大6400まで上げて撮影しました。この日のカメラがZ 6IIと高感度に強い機種であったこともありますが、最近のカメラは感度を上げても高感度ノイズが気にならないものも多いため、十分に使えるレンズであるという印象でした。そして何はさておき、こんなお天気の下でのレンズ交換はしたくないもの。ハードなシチュエーションこそ28mmから400mmまでこの1本で撮影できるメリットを実感します。

■撮影機材:Nikon Z 6II + NIKKOR Z 28-400mm f/4-8 VR
■撮影環境:28mm, F5, 1/50秒, 露出補正 -0.7段, ISO 1000, WB オート, PC:スタンダード
■撮影機材:Nikon Z 6II + NIKKOR Z 28-400mm f/4-8 VR
■撮影環境:185mm, F7.6, 1/30秒, 露出補正 -0.3段, ISO 6400, WB オート, PC:スタンダード
■撮影機材:Nikon Z 6II + NIKKOR Z 28-400mm f/4-8 VR
■撮影環境:400mm, F8, 1/100秒, 露出補正 -0.3段, ISO 6400, WB オート, PC:スタンダード

動く被写体相手の撮影

AF機構にステッピングモーターを採用し、動きの素早い被写体への素早いピント合わせも大きな特徴とされている本レンズ。今回は動物たちと飛行機で検証してみました。AFエリアモードは主にワイドエリアやオートエリアAFに設定。被写体検出設定に「鳥」や「飛行機」は入っていない機種での撮影ではありましたが、しっかりピントの合った写真を撮ることができました。

■撮影機材:Nikon Z 6II + NIKKOR Z 28-400mm f/4-8 VR
■撮影環境:28mm, F8, 1/3200秒, 露出補正 -1.0段, ISO 640, WB オート, PC:スタンダード
■撮影機材:Nikon Z 6II + NIKKOR Z 28-400mm f/4-8 VR
■撮影環境:250mm, F8, 1/320秒, 露出補正 -1.0段, ISO 1000, WB オート, PC:スタンダード
■撮影機材:Nikon Z 6II + NIKKOR Z 28-400mm f/4-8 VR
■撮影環境:340mm, F8, 1/1600秒, ISO 640, WB 自然光オート, PC:スタンダード
■撮影機材:Nikon Z 6II + NIKKOR Z 28-400mm f/4-8 VR
■撮影環境:400mm, F8, 1/2000秒, 露出補正 -0.7段, ISO 640, WB 自然光オート, PC:スタンダード

飛行機が離陸したのち、撮像範囲をFX(フルサイズ)からDX(1.5倍にクロップ)に変更。これにより600mm相当のレンズとして撮影することができました。

■撮影機材:Nikon Z 6II + NIKKOR Z 28-400mm f/4-8 VR
■撮影環境:400mm(撮像範囲:DX), F8, 1/5000秒, 露出補正 -0.3段, ISO 500, WB 自然光オート, PC:スタンダード

焦点距離順 桜スナップ

最後に、桜の時期のスナップを焦点距離順にご紹介します。

歩道橋の上から満開の桜を見下ろして撮影。広角で撮影することで桜が画面いっぱいに広がるさまを表現できました。

■撮影機材:Nikon Z 6II + NIKKOR Z 28-400mm f/4-8 VR
■撮影環境:28mm, F8, 1/160秒, 露出補正 +0.7段, ISO 800, WB 6250K, PC:ビビッド

 
川沿いでスケッチをしている方にお声がけして後ろ姿と桜並木を撮影。標準の画角と言われる50mmに近い焦点距離で撮影することで極端なデフォルメや圧縮効果がなく、自然な奥行き感となりました。

■撮影機材:Nikon Z 6II + NIKKOR Z 28-400mm f/4-8 VR
■撮影環境:44mm, F8, 1/320秒, ISO 640, WB 6250K, PC:ビビッド

西宮市の広田山公園のコバノミツバツツジが今年は桜の開花と重なり、濃淡のピンクに木々の緑との三重奏がとても綺麗でした。約90mmの中望遠による圧縮効果で2色のピンクの存在感が伝わる一枚となりました。

■撮影機材:Nikon Z 6II + NIKKOR Z 28-400mm f/4-8 VR
■撮影環境:89mm, F8, 1/640秒, 露出補正 -0.3段, ISO 400, WB 6250K, PC:ビビッド

両サイドから川を覆うように枝を伸ばす桜の間を阪急電車が通り過ぎて行きました。ここでは川の両岸の余計なものを切るために120mmで撮影。

■撮影機材:Nikon Z 6II + NIKKOR Z 28-400mm f/4-8 VR
■撮影環境:120mm, F8, 1/640秒, 露出補正 -0.7段, ISO 640, WB 6250K, PC:ビビッド

風に舞い散る桜の花吹雪は、濃い青空や暗めの背景でないとうまく写りません。この時は背景の緑に桜が重なったこと、また200mmという望遠により小さな花びらもボケと相まって大きく捉えることができました。

■撮影機材:Nikon Z 6II + NIKKOR Z 28-400mm f/4-8 VR
■撮影環境:200mm, F8, 1/400秒, 露出補正 -0.7段, ISO 400, WB 6250K, PC:ビビッド

咲き具合を確かめに桜の名所へ「桜パトロール」に出掛けたところ、これぞ本当のパトロールに遭遇(見頃を迎えて多くの人出が見込まれる土曜日……週末なのにお疲れさまです!)。歩いていく方々を追って咄嗟にシャッターを切った一枚ですが、個人的には最後尾の左側の方のピン!と伸ばした手がお気に入りです(笑)。

■撮影機材:Nikon Z 6II + NIKKOR Z 28-400mm f/4-8 VR
■撮影環境:240mm, F8, 1/400秒, 露出補正 -0.7段, ISO 400, WB 5560K, PC:ビビッド

高校の入学式に向かう人々に遭遇。300mmの望遠で撮影することで、桜も人の数もぎゅっと圧縮して賑わいを表現しました。

■撮影機材:Nikon Z 6II + NIKKOR Z 28-400mm f/4-8 VR
■撮影環境:300mm, F8, 1/400秒, 露出補正 +0.7段, ISO 400, WB 6250K, PC:ビビッド

ふと気付くと向こうから桜めぐりの十石舟がやってきました。一番望遠の400mmで、舟よりもかなり手前の木にピントを合わせたことで舟の形はしっかり捉えつつ乗船されている人々はしっかりボカすことができました

■撮影機材:Nikon Z 6II + NIKKOR Z 28-400mm f/4-8 VR
■撮影環境:400mm, F8, 1/250秒, 露出補正 +0.7段, ISO 200, WB 5800K, PC:ビビッド

まとめ

正直なところ「そうはいってもやや大きい」、カメラバッグに収めるにはちょっと大きめの収納スペースが必要となるレンズではありますが、広角から望遠、それも400mmという超望遠までレンズ交換なく撮影できるということ。さらに広角側での最短撮影距離が0.2mとかなり寄れるという点で、本当にこのレンズ1本でかなりのシチュエーションでの撮影をカバーできるものと思います。またレンズをあれこれたくさん持って行きたくない旅行の際の旅レンズとしてもおすすめです。私自身、今回は近場の関西圏での撮影となりましたが、ぜひ本レンズ1本だけの旅に出かけたいものです。

■撮影機材:Nikon Z 6II + NIKKOR Z 28-400mm f/4-8 VR
■撮影環境:400mm, F8, 1/500秒, 露出補正 -0.7段, ISO 1600, WB 5600K, PC:ビビッド

 

 

■写真家:クキモトノリコ
学生時代に一眼レフカメラを手に入れて以来、海外ひとり旅を中心に作品撮りをしている。いくつかの職業を経て写真家へ転身。現在はニコンカレッジ、オリンパスカレッジ講師、専門学校講師の他、様々な写真講座やワークショップなどで『たのしく、わかりやすい』をモットーに写真の楽しみを伝えている。神戸出身・在住。晴れ女。
公益社団法人 日本写真家協会(JPS)会員

 

 

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