富士フイルム GF55mmF1.7 R WR レビュー|寄りも引きも思いのまま、作品撮りをするならこのレンズ!

高橋伸哉
富士フイルム GF55mmF1.7 R WR レビュー|寄りも引きも思いのまま、作品撮りをするならこのレンズ!

はじめに

GFXシリーズのフラッグシップ機「GFX100 II」と同時に登場した、標準単焦点レンズの「GF55mmF1.7 R WR」。GF80mmF1.7 R WRと並んでGFレンズの中で最も明るい開放F値ということで、人物撮影をする人からしたら「待ってました!」というレンズになるのではないだろうか。

私もGF80mmF1.7 R WRを愛用していたことがあるが、それと同じF1.7のシリーズということで期待せずにはいられない(GF80mmF1.7 R WRの写りについては過去記事を見てほしい)。今回もポートレート作品とともに、このレンズの魅力を解説していきたいと思う。

44mm相当の絶妙な画角

まず触れるべきは55mm(35mm換算44mm相当)という画角だろう。筆者は普段35mmの焦点距離をメインに使っているが、それはポートレート撮影をする際に「ちょうど良い余白を作り出せる画角」というのが理由だ。ポートレート写真を作品として仕上げるにはこの余白が非常に重要だといつも言っているが、それでも35mmの広さがあると情報を整理するのが難しく、苦手としている人も多いように思う。

そうなると標準と言われる50mmの画角がやはり良さそうだが、実際に使ってみると思っているより狭くはないだろうか。50mmよりは広い方がいい、でも35mmだと広すぎる、そんな悩みを解決してくれる理想的な画角がこのレンズの44mmだと言えるだろう。

■撮影機材:富士フイルム GFX100 II + GF55mmF1.7 R WR
■撮影環境:F1.7 1/1250秒 ISO100
■撮影機材:富士フイルム GFX100 II + GF55mmF1.7 R WR
■撮影環境:F1.7 1/2500秒 ISO80

一時期、ZEISS Batisシリーズの40mmがポートレート界隈で流行ったが、その焦点距離にも近いということで、やはり好ましい画角であることは間違いない。広角のように周辺が歪むこともなく、絶妙に気分のいい余白が残せるちょうど良い画角だと使ってみて感じた。

特に縦の構図。35mmだとちょっと引いただけで上下の余白が多くなりバランスが難しいが、44mmであればそこをきゅっと狭めてくれるので被写体がいい感じに収まってくれる。極端な広角や望遠ではないので使い勝手が良く、ポートレートでも自然な印象に仕上がり、しかも引きも寄りもどちらも撮りやすいのが44mmの良さだ。

■撮影機材:富士フイルム GFX100 II + GF55mmF1.7 R WR
■撮影環境:F1.7 1/320秒 ISO80

F1.7の心地よいボケ

GFレンズで最も明るいF1.7の開放F値もこのレンズの魅力。絞り開放で撮ればこのようにモデルさんが浮かび上がるようなボケ感を作りだすことが可能だ。ラージフォーマットとあってそもそもの被写界深度が浅く、瞳にピントを合わせると鼻先がボケるくらいになるので、狙ったところに合焦しているか注意して撮影してほしい。

それでも標準画角とあって開放でもボケすぎるほどではなく、背景もいい感じに雰囲気が残る写真を撮ることができる。その点、例えばポートレート撮影で定番と言える135mmの大口径レンズを使うと、基本的には背景を完全にボカした撮り方になるだろう。もちろん被写体だけを際立たせるときには最高だが、周りの情景とともに写し込むような作品撮りでは、この程よいボケ感が重要だ。

■撮影機材:富士フイルム GFX100 II + GF55mmF1.7 R WR
■撮影環境:F1.7 1/1000秒 ISO100

ここに関して付け加えると、作品をスマホで見るような環境だと正直分かりにくいが、大きくプリントして個展を開いたり紙の写真集を作ったりする場合に、微妙なボケ感で作品としての魅力が全然変わってくるのだ。このレンズはその点も理想的で気持ちの良いボケ方をしてくれるので、安心して開放で撮っていける。

また、少し陽が落ちた夕暮れ時、マジックアワーで撮るポートレートは素晴らしい雰囲気に仕上がるが、そんな薄暗い環境でもF1.7であれば十分なシャッタースピードを稼げるのでありがたい。1億画素となると少しのブレが画質に影響してしまうが、この夕暮れ時の写真もバッチリ手持ちで撮影することができた。GFX100 IIに搭載された最大8.0段のボディ内手ブレ補正もしっかり効果を発揮しているのだと思う。

■撮影機材:富士フイルム GFX100 II + GF55mmF1.7 R WR
■撮影環境:F2 1/2500秒 ISO160

引き写真が楽しくなる解像感

GF55mmF1.7 R WRの最短撮影距離は50cmとあって、すごく寄れるレンズというわけではなく、ポートレート撮影ではバストアップ~全身を写すような使い方になってくる。

そうした時に好印象だったのが、思い切り引いて背景も広く取り込んだ写真だ。GFXは画面の隅々までとにかく高解像で、周りに写る草木や背景のディテールもしっかり描写されるので写真全体を見た時の完成度が段違いに良く感じられる。B0サイズ(1030mm×1456mm)の大きなプリントにしても全く問題ない解像度があり、何気なく撮った1枚がそのまま作品として使えるくらいの仕上がりだ。

■撮影機材:富士フイルム GFX100 II + GF55mmF1.7 R WR
■撮影環境:F1.7 1/2500秒 ISO80
■撮影機材:富士フイルム GFX100 II + GF55mmF1.7 R WR
■撮影環境:F4.5 1/320秒 ISO80

もちろんラージフォーマットがもたらす豊かな階調も大きなポイントで、普通だったら白飛びしそうな背景の雲も絶妙な濃淡で描き出してくれるので、安心して引き写真を撮ることができる。夕暮れ空のグラデーションも滑らかで美しく、その場の空気感をそのまま切り取ったかのような1枚を撮影することができた。

また、バストアップ以上にもっとクローズアップした絵が欲しいとなっても、GFX100 IIなら1億画素もあるので撮影後のトリミングで自在に調整することも可能だ。どれだけトリミングしていっても文句なしの描写を維持してくれるのはGFXならでは。普通のカメラでは難しいような、思い切ったトリミングで作品に仕上げることもできるだろう。

■撮影機材:富士フイルム GFX100 II + GF55mmF1.7 R WR
■撮影環境:F1.7 1/1250秒 ISO100
■撮影機材:富士フイルム GFX100 II + GF55mmF1.7 R WR
■撮影環境:F1.7 1/2000秒 ISO250

GFXは肌の描写が最高

GFXシリーズもXシリーズも、人物の肌が美しく撮れるのは富士フイルムのカメラの強み。メーカーによっては肌色がマゼンタ寄りになってしまうものもあるが、GFXなら女性好みの自然な美白かつ柔らかな質感で、撮って出しでもうっとりするような綺麗な写りをしてくれる。

特にGFXは肌を柔らかく描写できるのが魅力だ。ポートレート写真では肌がカリカリにシャープに写ってしまうと硬い印象になってしまうが、GFXは拡大すればバッチリ高解像なのに、全体で見た時に柔らかな印象に仕上がる。ラージフォーマットかつ1億画素の細かいピクセルによる、滑らかな階調と色再現によってそう感じるのだろう。他メーカーとは一線を画す写りで、肌に関しては撮影後のレタッチがほぼ必要ないほどだ。

■撮影機材:富士フイルム GFX100 II + GF55mmF1.7 R WR
■撮影環境:F1.7 1/250秒 ISO80
■撮影機材:富士フイルム GFX100 II + GF55mmF1.7 R WR
■撮影環境:F1.7 1/2000秒 ISO250

今回最新のGFX100 IIを使ったが、従来機種でネックだったレスポンスの悪さが改善されており、かなりストレスフリーに撮影することができた。瞳の検出AFも確かな性能向上をしており、以前使っていたGFX100Sと比べて全体的に進化していることを実感できる1台だ、さすがはGFXシリーズのフラッグシップ機。

さいごに

同じF1.7でもGF80mmF1.7 R WRは「まさにポートレート」という写真を撮る人向けで、対してこのGF55mmF1.7 R WRはもっとオールラウンドに作品撮りをしたい人にマッチするレンズだ。使いこなせば寄りも引きも思いのまま、この画角ならスナップで使うのにもいいだろう。素晴らしい描写力とF1.7のボケ感、そして使い勝手の良い画角、GFXでポートレートを撮るなら絶対に使ってほしい1本だ。

■撮影機材:富士フイルム GFX100 II + GF55mmF1.7 R WR
■撮影環境:F1.7 1/2000秒 ISO80

 

 

■モデル
春日久瑠実(@kuuurumin321
白川うみ(@umiiiii17
まゆめ(@mayume73

 

■写真家:高橋伸哉
スナップからポートレートまで幅広く撮影をする写真作家。写真集「impermanence」、書籍「写真からドラマを生み出すにはどう撮るのか?」「情景ポートレートの撮り方」など出版。共同執筆の書籍も多数。
写真教室も定期的に開催しており常に満員になるほどの人気。最近ではインドやタイを旅をしており世界中でスナップを撮るなど自分の好きを追求して写真を撮る日々。2024年9月20日~23日で銀座のHikoHikoGalleryにて個展「IN THE ZONE」を開催。

 

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