野生動物を船から撮ろう|船上撮影テクニック

戸塚学
野生動物を船から撮ろう|船上撮影テクニック

はじめに

以前は一部のマニアかプロでなければ海の生き物を船から撮るという考えはなかったが、最近は機材の進化と情報が簡単に手に入ることで撮影する人が増えているように思う。しかし、どうやって撮っていいかわからないという人も多いのではないだろうか。今回は夏の北海道を舞台に、船から生き物を撮るコツを紹介していく。

【北海道での船上撮影】
・根室から「落石ネイチャークルーズ」…海鳥とラッコがメイン
・知床羅臼側から「ゴジラ岩観光」「知床ネイチャークルーズ」…海鳥と鯨類(シャチ)
・ヒグマ撮影は羅臼町相泊港からヒグマウォッチングの小舟から行っている。ヒグマがメインでオジロワシと海鳥
・知床のウトロ側では知人の研究者の小舟に乗船させてもらい撮影を行った

今回の撮影ではキヤノンのEOS R5とEOS R7、レンズはEF16-35mm F4L IS USMとRF100-500mm F4.5-7.1 L IS USMを使用した。

※取材時は天気があまり良くなかったこともあり、イメージしやすいように一部過去の写真も使用して解説している。

シャチ
シャチはおばあさんを中心にしたメスの家族群で行動をする。オスも群れの中に数頭いるが、オスはメスに比べて身体が大きいだけでなく、海面からも目立つ大きな背びれで違いが判る。なんと言ってもオスは迫力があるのでその姿をフレームに全体で入れるか?顔の部分をアップで撮るか?が悩ましい。この写真はオス。
■撮影機材:Canon EOS R7 + RF100-500mm F4.5-7.1 L IS USM
■撮影環境:F9 1/1250秒 ISO640 焦点距離176mm WB太陽光
エトピリカ
以前は霧多布岬でも見られたが、現在はユルリ・モユルリ島周辺海域以外では見られない。したがって撮影には根室の落石漁港から出る「落石ネイチャークルーズ」を利用することになる。ピエロのような色鮮やかな夏羽の姿は野鳥カメラマンを魅了する。
■撮影機材:Canon EOS R7 + RF100-500mm F4.5-7.1 L IS USM
■撮影環境:F8 1/2500秒 ISO640 焦点距離500mm WB オート
ラッコ
現在は1年を通じて根室地域では姿を見ることができるようになった。数も増え、霧多布岬では親子の姿を見ることもできる。しかし船の上でなければ近くで撮影できない。好奇心旺盛の個体は、船に寄ってくることもある。写真はじゃれ合う2頭。こちらをちょっぴり気にしている。
■撮影機材:Canon EOS R7 + RF100-500mm F4.5-7.1 L IS USM
■撮影環境:F7.1 1/4000秒 ISO800 焦点距離500mm WB太陽光
エゾヒグマ
現在知床では陸上でのヒグマ撮影は規制されている。しかしヒグマウォッチング船からは規制はされていないので安心して自然な姿を撮影できる。小さな船だからこそ波打ち際近くまで寄せて撮影をさせてくれる。
■撮影機材:Canon EOS R7 + RF100-500mm F4.5-7.1 L IS USM
■撮影環境:F8 1/1000秒 ISO640 焦点距離500mm WB太陽光

機材セレクト

まずは外洋にいる海鳥は基本遠いと考えるべきなので、APS-CセンサーのEOS R7にRF100-500mm F4.5-7.1 L IS USMで対応した。テレ側だとフルサイズ換算で700mm相当の撮影ができるからだ。

フルサイズセンサーのEOS R5は広角で風景と合わせた撮影用にサブとした。EOS R5なら1.6倍クロップ(約1730万画素)を使っての撮影もできるので、EF16-35mm F4L IS USMを合わせた時には結果的に16mm~56mmまでをカバーできることになる。 

※軽量にこだわるならEOS R7+RF100-400mm F5.6-8 IS USMでもいいし、フルサイズにこだわるならEOS R6 Mark II+RF200-800mm F6.3-9 IS USMでもお薦めだ。  

EOS R5 + EF16-35mm F4L IS USM
EOS R7 + RF100-500mm F4.5-7.1 L IS USM

ズームレンズを選ぶわけ

単焦点レンズもいいのだが、やはり海上ではズームレンズがベストだと思う。最近はコンパクトで軽く、高画質なレンズが多いので利用しない手はない。ズームレンズのいいところは画角を変えて撮影ができる点だ。使い方としては遠くの海鳥はテレ側で狙い、途中で鯨類が出た場合はワイド側にすれば巨体な鯨類も1本のレンズで撮ることができる。

高速連写と高速シャッターを常用にする

「海の船上=揺れる」と考えたほうがいい。もちろん稀に凪の日もあるが基本揺れるし波もあるし風も強いことが普通だ。あとは船の大きさや種類(漁船・クルーザー・大型船)にもよって変わってくる。

私の基本設定は、シャッター速度を1/2000秒以上としている。理由は揺れる船上でのブレを少しでも抑え込みたいからだ。絞りは天気にもよるが晴れなら1段~2段絞り込み、曇りなら開放値とする。明るさはミラーレス機ならばISO感度を変えることでファインダーを覗きながら明るさを調整できる。またドライブ設定は高速連写(機種によるが秒間15コマ以上が理想)にしている。

チシマウガラス
以前は夏羽のチシマウガラスを見ることはほとんどできなかったが、ここ数年根室の落石ネイチャークルーズでは繁殖する姿を見ることができる。漁船を利用していることが鳥たちから警戒をされにくい利点があるのかもしれない。とはいえ動く船上から岩にとまる姿は高速連写&高速シャッター&サーボAFの追従性能は必須となる。
■撮影機材:Canon EOS R7 + RF100-500mm F4.5-7.1 L IS USM
■撮影環境:F8 1/1000秒 ISO640 焦点距離500mm WB太陽光
イシイルカ
イシイルカは海面に姿を現さない独特な泳ぎをする。ハンドウイルカのようにフレンドリーに船についてアクションをしてくれないが、この時は珍しく舳先について泳ぎ出した。慌てて舳先横の床から真下のイシイルカを広角レンズで撮影をした。透明度が高いのでイシイルカの姿がはっきりわかる!この時はまだミラーレス機ではないので明るさをファインダーで確認できず、結果オーバーになってしまった!失敗ではあるが遅めのシャッタースピードで流し撮り風になりこれはこれで気に入っている。
■撮影機材:Canon EOS 5D Mark II + EF17-40mm f/4L USM
■撮影環境:F4 1/50秒 ISO200 焦点距離40mm WB太陽光
エゾヒグマ
ヒグマ撮影では近くでの撮影は不可能だし、船が座礁でもすれば命に係わる。そのため、ある程度の距離が必要になるため、APS-Cと500mm程度の焦点距離はちょうどいいと思っている。ヒグマにとっては目障りなことは間違いなさそうだが、絶妙な距離感が自然な仕草の撮影を可能にする。
■撮影機材:Canon EOS R7 + RF100-500mm F4.5-7.1 L IS USM
■撮影環境:F7.1 1/2500秒 ISO800 焦点距離500mm WB太陽光

その他の設定

AFはキヤノンの場合はサーボAFが基本となる。EOS R6 Mark IIやEOS R7にはシャッター半押し状態から画像を記録できる「RAWバースト」という機能がある(シャッター全押しから最大約0.5秒前を記録できる機能)。この機能を使えばチャンスを逃さなくなる。名前の通りJPGでの記録はできずRAWオンリーとなる。ただしとんでもなく撮影枚数が上がるので、「覚悟」をした上で撮影すればチャンスに強い「鬼に金棒」機能となる。

AFエリアだが画面のすべてに合わせる全域AFでもいいが、手前の波にフォーカスが引っ張られターゲットの鳥にピントが合わないこともあるので、中央周辺のエリアでピントを合せるタイプを選ぶといい。キヤノンの場合ゾーンAFが使いやすいので、私はこれを選んでいる。

シャッターは電子シャッターがお勧め。高速連写が可能になり、かつブラックアウトフリーで撮影できるからだ。ただ野鳥は速い羽ばたきがある場合、ローリングシャッター歪みによって翼が変な形に歪んでしまうことがある。上位機種はこの歪みがかなり抑えられているが、気になる場合はメカシャッターに切り替えるのがいい。

ショウドウツバメ
翼が高速で動く場合、ローリングシャッター歪みで不自然な形に歪むことがある。それが許せない場合、メカシャッターに切り替えれば防ぐことができる。海鳥の写真で顕著な物がなかったので、こちらは参考までにショウドウツバメの写真を使用。
■撮影機材:Canon EOS R7 + RF100-500mm F4.5-7.1 L IS USM
■撮影環境:F8 1/500秒 ISO250 焦点距離472mm WBオート
エトピリカ
ローリングシャッター歪みでは鳥の翼が歪むほかにバックの物が歪む現象もある。この写真ではエトピリカの翼に違和感は感じられないが、バックにある風車が斜めになってしまった。
■撮影機材:Canon EOS R7 + RF100-500mm F4.5-7.1 L IS USM
■撮影環境:F8 1/5000秒 ISO640 焦点距離500mm WB太陽光
ケイマフリ
海鳥を撮影する場合、波の影響は無視できない。波と波の間に鳥が入ってしまうと写真のように顔だけが見えたり、姿そのものが見えなくなることもある。そんな場合は一旦AFを止めて、姿が見えた瞬間にAFを作動させる。この時全域AFよりも範囲を絞ったゾーンAFが有利になる。合わせて、RAWバーストなどを利用すると失敗を防げる。しかし撮影枚数が異常に上がるので、後処理を覚悟して使用していただきたい。
■撮影機材:Canon EOS R7 + RF100-500mm F4.5-7.1 L IS USM
■撮影環境:F8 1/2500秒 ISO1000 焦点距離500mm WB太陽光
ケイマフリ
波が穏やかな場合は高速シャッターや高速連写はしなくてもいいが、潜ったり飛び去ることもあるので「何を狙うか?」を自分で決める事。またミラーレス機ならファインダーで明るさを調節できるので鳥の羽色に合わせた露出調整をしたい。ここではケイマフリの目の周りの白い縁取りを活かすためアンダーめに露出を決定した。
■撮影機材:Canon EOS R7 + RF100-500mm F4.5-7.1 L IS USM
■撮影環境:F8 1/2500秒 ISO1000 焦点距離500mm WB太陽光

乗船ポジションはどこがいい?

基本的には舳先がいい。理由は邪魔な物が無いので撮影がしやすいからだ。他の利点としては目線が低いのでバックに山や陸地を入れた風景的な撮影ができる。ただ問題もある。目線が低いので生き物を見つけにくくなる事だ。特に鯨類は2階席であれば浮上する姿を俯瞰で見つけやすくなる。どちらがベストという事は言えないので、自分が狙う生き物やシーンに合わせてポジションを選ぶことになる。

注意事項として波やうねりで船体が揺れる場合、必ず身体を固定できるようにすること。また「いい写真が撮りたい」と思っても入ってはいけない場所やクルーから注意された場合は必ず指示に従う事を肝に銘じていただきたい。軽い気持ちの身勝手な行動から他の人を危険にさらすことに繋がりかねないことを理解しよう。

乗船ポジションは狙う被写体によって変わってくる。この写真を見ると船の前方(舳先)に集まって近くのシャチを観察&撮影をしている。この状態で潜水してから船の近くに浮上する場合、目線が低いと発見できないが2階なら俯瞰で見られるので発見が早くなる。
シャチ
船の2階席からシャチを探していると1頭がスパイホップ(水面から顔を出す行動)をしたので撮影しているともう1頭が浮上してきた。下の階だと角度的に2頭の重なり具合が平面的見えてしまうので2階席を選んで正解だった。
■撮影機材:Canon EOS R7 + RF100-500mm F4.5-7.1 L IS USM
■撮影環境:F7.1 1/2000秒 ISO800 焦点距離343mm WB太陽光

三脚は不要

三脚は不要だ。波やうねりがあるので使えないと思ったほうがいい。基本的には船のエンジンを切らないので、三脚を使用すると安定をするはずが、エンジンの振動を拾ってブレやすくなる。

手持ち撮影のコツは船体に身体を押し付けて身体を安定させる。エンジンの振動は身体が吸収してくれるので1/2000秒なら気にしなくていい。動画も撮れるが200mm以上の望遠レンズを使うとほんの少しの揺れでも画面が大きくブレるので難しくなる。広角か100mm以下で狙うといい。これまでの経験から動画を撮るならスマホが一番有利になる気がする。

霧の場合のAFは?

霧が薄い場合は問題ないが、霧が濃い場合はAFがきかない場合がある。そんな時はシャッターボタンでAF作動する設定なら、シャッターボタン半押しを数回繰り返しピントが合ったところでシャッターを切ればいい。AF-ONボタンの場合も同じ操作になる。

私は通常AF-ONボタンのみでピント合わせをしている。シャッターはレリーズだけにしているが、常に親指でボタンを押し続けていると親指が疲れて痛くなる。海ではデフォルトのシャッター半押しでAF作動に戻すと親指が疲れなくていい。

デフォルト設定では左の「AF」アイコンにオレンジの枠が付いている。これだとシャッター半押しでAFが作動する。私はボタンカスタマイズで測光開始にしている。AFはAF-ONボタンで作動するようにしているが船上ではデフォルトに戻すと疲れなくていい。
霧の中のシャチ
AF性能が良くなったとはいえ、やはり霧が濃いとAFが迷ってしまう。AFエリアをゾーンAFにしてあってもAFの動作が挙動不審になる。そんな場合はAF-ONボタンを数度押してピントがくるようにするか、半シャッターを繰り返す。それでもだめならマニュアルで対応をしたい。この写真の場合、左のオスシャチの背びれにAFでピントを合せている。
■撮影機材:Canon EOS R5 + RF100-500mm F4.5-7.1 L IS USM
■撮影環境:F8 1/2000秒 ISO500 焦点距離200mm WBオート

服装と持ち物

北海道では夏と言っても本州とは違う。港は晴れていて、半袖シャツでも暑いくらいであってもここで気を緩めてはいけない。海上に出れば海風が冷たいのだ。私は港で暑いと感じた場合は防水バッグにインナーダウンを入れておき、寒くなって来たら着るようにしている。(防水バッグの中には手袋・タオル・バッテリー・スマホ予備のカメラ&レンズを収納している。)

寒さを感じない場合はレインウェア上下と長靴がいい。この服装が良いのは波を被った場合に濡れなくていいからだ。濡れた後に風を受けると一気に寒くなる。そうなれば撮影どころではなくなってしまうからだ。手袋は使わなくても持っていく事を勧める。ライフジャケットは必ずしっかりと装着して簡単に脱げないようにすること。

※これはカメラの服装になるかもしれないが、レインカバーを装着することで波しぶきや霧などから守ってくれる。保護カバー(レンズラップ)でもしないよりはいい。

この写真は冬のスタイルだが、夏も冬も基本はライフジャケットとレインウェアの上下と長靴。これなら突然波を被った場合に対応できる。頭にタオルを巻いておけば、波をかぶった場合に機材の海水をすぐ拭き取れる。現在はライフジャケットをしっかりと装着しないと乗船ができない。
レンズラップ
波がある場合は海水を被る時がある。レインカバーを着けることで不足の事態に機材を守れる。ただ操作がしずらくなるデメリットもある。レインカバーがなければ保護用のレンズラップ(レンズカバー)に防水処置をしておけば代用にもなる。
防水バッグ
防水バッグはダイビングショップや最近はホームセンターでも売っていることが多いので船に乗る時は常備したい。私はスマホや財布、バッテリー、SDカードなど濡れては困るものと、タオルやサブ機材も入れている。最悪メイン機材をしまうことができる大きさがいい。
ラッコ
漁船を利用する落石ネイチャークルーズはラッコたちにおぼえられている可能性もある。これは勝手な私の考えだが「あいつらは危害を加えない」と思っていると感じる。この個体のように波や流れで船に寄せられても平気でいるし、中には自分から近づいてくる個体もいるようだ。こういう時は余裕を持って撮影できる。
■撮影機材:Canon EOS R7 + RF100-500mm F4.5-7.1 L IS USM
■撮影環境:F8 1/2000秒 ISO1250 焦点距離363mm WB太陽光
ラッコ
群れでいる場合、鳥も哺乳類も寄ることが難しい。理由は警戒心が非常に強い個体が逃げた場合、つられて逃げる個体がいてその後は伝染するように全部が逃げ出すからだ。この時もラッコの群れとの距離があることでくつろぐ様子を撮影できた。
■撮影機材:Canon EOS R7 + RF100-500mm F4.5-7.1 L IS USM
■撮影環境:F7.1 1/2000秒 ISO1250 焦点距離500mm WB太陽光
ハイイロミズナギドリ
大群でいる時は船が近づくだけで一斉に逃げ飛ぶことが多いハイイロミズナギドリだが、時折ばらけた群れでいると船が近づいても「おや?」っとした顔でこちらを見ていることがある。その後「めんどくさい」という感じで飛び立つか潜る。この時は助走をつけて飛ぶシーンを移動する船上から撮影した。
■撮影機材:Canon EOS R7 + RF100-500mm F4.5-7.1 L IS USM
■撮影環境:F7.1 1/2000秒 ISO640 焦点距離500mm WB太陽光
ケイマフリ
研究者に小舟を停泊してもらうと周囲のケイマフリたちの動きを確認できるようになった。巣のある崖を目指して海上から戻ってくるケイマフリを見つけたのでそれを狙った。赤い足を強調しながら着水するシーンを撮ることができた。
■撮影機材:Canon EOS R7 + RF100-500mm F4.5-7.1 L IS USM
■撮影環境:F8 1/1250秒 ISO400 焦点距離500mm WB太陽光
シャチ
雪を抱いた知床連山をバックに快晴の天気でシャチを撮影ができるチャンスは滅多にない!合わせて凪の日など稀である。しかし出航時イマイチな天気でも帰りには快晴になることもあるので、ダメ元で広角系のズームは必ず持っていく。
■撮影機材:Canon EOS R6 + RF24-105mm F4 L IS USM
■撮影環境:F6.3 1/5000秒 ISO400 焦点距離105mm WB太陽光
シャチ
この記事のため「できるだけ広角でばっちりの写真を撮って・・・」などと下心が裏目に出て3回乗ったが一度も狙い通りのシーンに当たることはなかった。それでもと思い何とかEF16-35mm F4L IS USMでシャチとクルーズ船を同じフレームに収めてみた。
■撮影機材:Canon EOS R5 + EF16-35mm F4L IS USM
■撮影環境:F9 1/1000秒 ISO800 焦点距離35mm WBオート
ミツユビカモメ
飛翔する野鳥は陸上でも船上でも設定は同じでいいが、揺れる船上の方が難易度は上がる事を理解しよう。空バックであれば揺れる船上でもピントが合いやすいし、ピントの追従もしてくれる。あとはファインダーから外さないように全集中して自分が撮りたい飛翔姿になった時に連写する。
■撮影機材:Canon EOS R7 + RF100-500mm F4.5-7.1 L IS USM
■撮影環境:F7.1 1/2000秒 ISO800 焦点距離500mm WBオート
ウミウ
止まりから飛翔する姿を狙う場合、ピントがバックに引っ張られやすい。そんな時は空バックになった時にピントを合せればいい。この写真のように鳥が大きくファインダーに入っていれば、サーボAFでほとんどピントを外すことはない。
■撮影機材:Canon EOS R7 + RF100-500mm F4.5-7.1 L IS USM
■撮影環境:F8 1/4000秒 ISO1000 焦点距離500mm WB太陽光
エトピリカ
エトピリカは他の海鳥に比べて飛翔高度が高いので空バックになりやすく、AFでピントが合わせやすい。あとはファインダーから外さないように全集中すればいい。全身が黒い鳥はバックに紛れてピントが外れやすいが、エトピリカの目立つオレンジの嘴と白い飾り羽をAFがしっかりとらえ、ピントを追従してくれた。
■撮影機材:Canon EOS R7 + RF100-500mm F4.5-7.1 L IS USM
■撮影環境:F8 1/5000秒 ISO640 焦点距離500mm WB太陽光
フルマカモメ
フルマカモメは漁船の網からこぼれる「おこぼれ」を狙っていることが多いので、船の後をついて来ることがある。他の海鳥と違い、停泊をすると周囲に着水をするので船の近くに浮かんでいる姿も撮影ができる。この時は船の後を追いかけてきたので飛翔する正面顔を撮影できた。
■撮影機材:Canon EOS R7 + RF100-500mm F4.5-7.1 L IS USM
■撮影環境:F7.1 1/2000秒 ISO640 焦点距離472mm WBオート
ミツユビカモメ
岩礁にカモメの群れがとまって翼を休ませていた。オオセグロカモメとウミネコがほとんどだが、ミツユビカモメが数羽紛れていたので、小舟を岩に寄せてもらい流れる船の上から横位置になる瞬間を狙った。
■撮影機材:Canon EOS R7 + RF100-500mm F4.5-7.1 L IS USM
■撮影環境:F7.1 1/2000秒 ISO500 焦点距離500mm WBオート

さいごに

生き物の撮影は陸上から超望遠レンズで撮影するというのが普通だと思い込んでいたのではないだろうか?しかし海には海鳥やクジラ、アザラシ、ラッコ、オットセイなどがいる。陸上からはどんなに超望遠レンズでも限界があるが、自分が船に乗り生き物に近づくことができれば望遠ズームでもしっかりと撮影することができる。特にクジラ類は大きいのでジャンプなどの迫力のある撮影ができれば病みつきになること間違いなしだ。

ヒグマは陸上では基本的には警戒心が強いので出会うのは難しい。仮に予期せずうっかり出会った場合、運が悪ければ命を落とす危険性もある。しかし海からのアプローチなら自然な姿を撮影できる。ヒグマ撮影には岸に近づける小型船が有利になる。次回チャンスがあれば冬の北海道での流氷の海の生き物撮影や港での生き物撮影も書いてみたい。

エゾヒグマ
空腹なのか海に潜り泳ぎながらエサを探すヒグマ。これを陸上で狙うとなると、なかなかな気合と根性がいる。船上は緊張感がないというカメラマンもいるが、私にとって安全第一が撮影の第一条件となる。大きな船だとヒグマまでここまで寄ることもできないが、小舟だと目線での撮影もできる。
■撮影機材:Canon EOS R7 + RF100-500mm F4.5-7.1 L IS USM
■撮影環境:F8 1/1000秒 ISO640 焦点距離500mm WB太陽光
トド
小舟でヒグマを探していると若いトドが岩の上で休息をしていた。冬場には時々トドを見ることはあるが、夏場は初めての経験でとてもワクワクしながら撮影を楽しめた。船が小さいことでここまで寄ることができた。
■撮影機材:Canon EOS 5D Mark III + EF100-400mm F4.5-5.6L IS II USM
■撮影環境:F5.6 1/1250秒 ISO800 焦点距離390mm WBオート

 

 

■野鳥写真家:戸塚学
幼少の頃から好きだった自然風景や野生の生き物を被写体として撮影。20歳の時、アカゲラを偶然撮影できたことから野鳥の撮影にのめり込む。「きれい、かわいい」だけでなく、“生きものの体温、ニオイ”を感じられる写真を撮ることが究極の目標。作品は雑誌、機関紙、書籍、カレンダー、コマーシャルなどに多数発表。
・日本野鳥の会 会員
・西三河野鳥の会 会員
・日本自然科学写真協会(SSP)会員

 

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