キヤノン RF600mm F11 IS STM レビュー|引き寄せ効果が楽しい軽量コンパクトな超望遠レンズ

GOTO AKI
キヤノン RF600mm F11 IS STM レビュー|引き寄せ効果が楽しい軽量コンパクトな超望遠レンズ

はじめに

キヤノンの「RF600mm F11 IS STM」は、超望遠でありながらこれまでの常識を覆すような軽量コンパクトな設計で、自然風景の撮影において新たな可能性を感じさせてくれたレンズです。今回はこのレンズの魅力と性能を、実際の撮影体験を交えてレビューしていきたいと思います。

スペックと特徴

収納時はコンパクトになります。
撮影の時にはロックを解除して鏡筒を伸ばします。

このレンズを初めて手にしたとき、まず驚かされたのはその軽さとコンパクトさでした。600mmという超望遠域でありながら、全長269.5mm、重量は約930gのサイズ感は、自然の中を歩き回りながらの手持ち撮影でも疲労を感じにくい設計です。長時間の移動を伴う撮影においては、レンズを短く収納して持ち運びできることもメリットです。

「RF600mm F11 IS STM」は、F11という固定絞りを採用しているため、光量調整など撮影の条件を選ぶ面はありますが、光学設計がシンプルになり、軽量で価格も手頃に抑えられているのが魅力です。焦点距離600mmという焦点域は、遠くの被写体をまるで目の前に引き寄せるかのように、詳細に捉えることが可能。レンズの先端は指がかりと革シボ加工でホールド感の高い仕様になっており、幅が広いフォーカシングリングで繊細なピント調整がしやすいデザインです。

「RF600mm F11 IS STM」には、5段分の手ブレ補正が搭載されており、長焦点距離のレンズでありがちな手ブレをしっかりと補正します。これにより、三脚を使わずともシャープな画像を得ることができます。レンズ側面のスイッチもRFレンズを使用している方には直感的に操作ができるお馴染みの配置です。

引き寄せ効果

「RF600mm F11 IS STM」の望遠効果の一つが引き寄せ効果です。その名の通り、遠方の被写体を大きく写すことが可能です。比較のために標準ズームレンズと広角ズームレンズの写真も用意しましたので、一緒に見ていきましょう。

▼28mm

こちらは「RF28-70mm F2 L USM」の焦点距離28mmで撮影した写真で、比較のために用意しました。この中央部の黄葉を同じ場所から「RF600mm F11 IS STM」で撮影したのが次の写真です。画面いっぱいに色彩が広がり、ぱっと見、本当に同じ場所から撮影したのか疑いたくなるような写真ですね。普通の風景の中から、超望遠レンズで撮影することで作品がうまれると思うと、ワクワクしてきます。F11の固定絞りですが、日中の明るい条件下では非常にクリアな画像が得られ、色再現も鮮やかです。

 

▼600mm

■撮影機材:Canon EOS R5 + RF600mm F11 IS STM
■撮影環境:F11 1/60秒 ISO400

もう一つ見てみましょう。

▼35mm

こちらは「RF15-35mm F2.8 L IS USM」の焦点距離35mmで撮影した写真です。よくある夕景の写真ですが、こちらの中央部分を「RF600mm F11 IS STM」で撮影したのが次の写真です。画面いっぱいに綺麗だなと感じた色彩を捉えて、撮影者の意図が反映した作品となりました。600mmの引き寄せ効果、すごい迫力ですね。

 

▼600mm

■撮影機材:Canon EOS R5 + RF600mm F11 IS STM
■撮影環境:F11 1/100秒 ISO400

こちらは海面を撮影した動画です。水平線近くの海流や光が引き寄せられ、標準レンズなどで捉える海の表情よりも近くにあるような見え方です。

■撮影機材:Canon EOS R5 + RF600mm F11 IS STM

圧縮効果の表現

次に超望遠レンズの効果として、圧縮効果を使用した作例をみてみましょう。

■撮影機材:Canon EOS R5 + RF600mm F11 IS STM
■撮影環境:F11 1/100秒 ISO400

こちらは岩壁の上から150メートル離れたところにある暗い海面を狙った一枚です。右側の黒い部分はカメラ前にあった木々が逆光で暗く写っているようすです。F11でも十分ボケる距離感ですが、写真画面の中では距離が近くに感じられると思います。

■撮影機材:Canon EOS R5 + RF600mm F11 IS STM
■撮影環境:F11 1/8000秒 ISO50

海面を照らす夕陽の反射を切り取った写真です。圧縮効果で画面下から上までの距離がグッと縮まり、画面上部の海面がグッとこちら側に迫ってくるように感じられるでしょうか。海面に映る黄金色の反射光がまるで輝く帯のように捉えられ、その美しさに息を呑みました。奥行きのある場所を平面化して、肉眼とは違う見え方でドラマチックな描写を楽しみたい時に効果的です。

■撮影機材:Canon EOS R5 + RF600mm F11 IS STM
■撮影環境:F11 1/200秒 ISO100

岩同士の距離感が実際よりも近くに感じられる作例です。肉眼で見る風景と異なるため、写真は平面的ですが空間が感じられる描写です。

F11のボケ味

F11固定のレンズですが、超望遠のおかげで思っていた以上に被写体の前後がやわらかくボケて、ピントを合わせた被写体を引き立たせる効果がうまれます。

■撮影機材:Canon EOS R5 + RF600mm F11 IS STM
■撮影環境:F11 1/200秒 ISO100

こちらは崖に咲く花を撮影した作例です。被写体の前後が滑らかにボケて、自然風景の撮影において効果的です。花が浮き上がるように表現されました。

静音AF

■撮影機材:Canon EOS R5 + RF600mm F11 IS STM
■撮影環境:F11 1/640秒 ISO400

「RF600mm F11 IS STM」はその軽さと焦点距離のおかげで、瞬時に空を飛ぶ鳥の動きを簡単に捉えることができました。STMモーターによる静音AFは、スムースなフォーカスをサポートしてくれます。

光量が足りない時はISO感度を上げる

F11という固定絞りのため、光量が不足するシーンでは多少の工夫が必要です。早朝や曇りの日など、光量が少ない状況ではシャッタースピードを上げることが難しくなり、ISO感度を上げる必要があります。カメラのノイズ低減をオンにして撮影しましょう。下の作例はISO感度を1600に上げています。

■撮影機材:Canon EOS R5 + RF600mm F11 IS STM
■撮影環境:F11 1/1600秒 ISO1600
■撮影機材:Canon EOS R5 + RF600mm F11 IS STM
■撮影環境:F11 1/160秒 ISO1600

ISO感度を下げて低速撮影

上の作例と逆ですが、ISO感度を下げて、シャッター速度をある程度落とすことが可能です。

こちらはNDフィルターなしで、ISO50で撮影した作例です。1/5秒までシャッター速度が落ちて、水の流れを表現することができました。

■撮影機材:Canon EOS R5 + RF600mm F11 IS STM
■撮影環境:F11 1/5秒 ISO50

まとめ

「RF600mm F11 IS STM」のレビューはいかがでしたでしょうか。固定絞りF11で暗い撮影シーンは得意ではないけれど、晴天の日には威力を最大限に発揮するレンズです。軽量で持ち運びやすく、手ブレ補正機能も充実しているため、日中の撮影をメインとして適切な光量が確保できる条件で撮影される方には、新たな発見を期待できるレンズと言えるでしょう。三脚を併用すれば撮影可能な時間帯が広がるので、固定絞りF11は気にならないと思います。

遠くの景色を引き寄せたり、圧縮して写真画面の中で独特な距離感を生み出す体験は他のレンズでは味わえない独特なものです。新たな風景写真を楽しみたい方は是非お試しください。

 

 

■写真家:GOTO AKI
1972年 川崎生まれ。1993~94年の世界一周の旅から今日まで56カ国を巡る。現在は日本の風景をモチーフに創作活動を続けている。2020年日本写真協会賞新人賞受賞。日本大学芸術学部 准教授・武蔵野美術大学造形構想学部 非常勤講師・キヤノンEOS学園東京校講師。

 

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