デジタル時代の現像スキルでワンパターンから脱却 vol.2 「ベストショットを仕上げる現像」

TAKASHI
デジタル時代の現像スキルでワンパターンから脱却  vol.2 「ベストショットを仕上げる現像」

本記事執筆者のTAKASHI氏が登壇してα7RシリーズとGMレンズを紹介するソニープロカメラマンセミナー[無料]を2024年9月21日(土)に開催します。開催場所はカメラのキタムラ 平塚店の他、全国のカメラのキタムラ16店舗でもライブ中継にて開催いたしますので、ご興味のある方は文末の応募概要を是非ご覧ください。

はじめに

前回公開のvol.1 「ベストショットを選ぶ」ためのルーチンでは、露出固定で撮影した多数の構図の写真から効率よくベストショットを選ぶ方法をご紹介しました。

ここでは、その時に選んだベストショットをAdobe Lightroom Classic CCで仕上げる現像やノイズ処理についてご紹介します。

※ここでご紹介するのは風景写真(特に富士山)の経験から得た私なりの考え方と方法論の一つのパターンです。写真によって別のパターンで行う場合もあれば、これが絶対正解という訳ではありませんので、ここでご紹介する以外の考え方や方法論も参考にしていただき、ご自身に適した道を見出していただければ幸いです。
※ここでは現像の主な流れをご紹介することを目的とするので、Lightroom Classic CCの操作方法全てについては触れません。

参考動画:アドビ公式YouTubeセミナー「写真家が語る『物語を伝える』写真のつくりかた」

「ベストショットを仕上げる現像」の基礎

vol.1「ベストショットを選ぶ」ためのルーチンで選んだ「★★★」のベストショット(画像1)はレーティングするための粗現像の段階なので、これから仕上げの現像を施していきます。

【1】

粗現像では「シャドウ」と「黒レベル」をプラスに調整し、トーンカーブで「コントラスト(中)」のコントラストを付けたのみなので全体的にやや暗く鮮やかさが不足しています。

【2】

全体を明るくするには「露光量」をプラスに調整しても良いのですが、全体が明るくなって表情が乏しくなります。そこで「白レベル」を+55まで調整することで全体を明るくします。(画像2)

※変化がわかりやすいように強めに調整しています。

「白レベル」調整前の(画像1)と「白レベル」調整後の(画像2)で画面右上のヒストグラムを比較すると、右側の明るい山が右方向(明るい方向)に拡張されていることがわかります。右側の明るい山がヒストグラム枠の右端を越えると白飛びしているので、ヒストグラムと画面を見ながら白飛びしないよう「白レベル」を調整することがポイントです。

これによって「露光量」をプラスに調整するよりも、より豊かな階調で明るく調整できます。

※写真によっては他の方法の方が良い結果が得られる場合があるので、一つの参考としてください。

【3】

撮影時に暗部であったひまわりの黄色が、明るくなることで鮮やかになり存在感が出てきましたが、撮影時に明部であった空と富士山のコントラストが落ちてしまいました。

明部のコントラストを取り戻すため「ハイライト」を-100まで思い切って下げてみます。(画像3)
ご覧になっているPCやブラウザによっては(画像2)と(画像3)の差は僅かだと感じるかもしれませんが、実際の現像画面では空と富士山のコントラストがかなり戻っています。

※この写真の場合は不自然さを感じませんが、写真によって不自然になる場合は調整量を少なくします。調整できるパラメータ(スライドバー)が多数あるので全体的にバランスが良くなるよう、それぞれを少しずつ調整していきます。

【4】

【5】

空と富士山とひまわりの黄色はバランス良くなりましたが、ひまわりの葉が鮮やかすぎるので少し彩度をマイナス調整します。

しかし基本補正の「自然な彩度」や「彩度」を下げると、ひまわりの黄色までくすんでしまうので他の方法を使うことになります。Lightroom Classic CCは多様なパラメータを調整できるため様々な調整の可能性がありますが、この写真の場合は緑だけ調整できれば良いので「カラーミキサー」を使って調整します。

(画像4)の「カラーミキサー」メニュー内、「彩度」の「グリーン」のスライドバーを-70まで下げてみると狙った通りにひまわりの葉の彩度が下がりました。

この時も全体が不自然にならないように少しずつ調整していくことがポイントです。
また緑の彩度が落ちた分、黄色の鮮やかさが目立ちすぎると感じれば「彩度」の「イエロー」のスライドバーを少し下げてバランスを取ります。(画像5)

このようにして全体のバランスを見ながら不自然にならない程度に、注意して少しずつ調整を繰り返していきます。

【6】

次に青空が少し淡く感じるので「カラーミキサー」の「彩度」で「ブルー」の彩度を+30まで上げてみます。(画像6)
空のコントラストが際立ち、空、富士山、ひまわりの花のそれぞれの存在感がバランス良く整いました。

このようなシーンでは撮影時にPLフィルターを使って空のコントラストを際立たせる方法がありますが、この写真のように超広角(焦点距離17mm)だと空のコントラストが均一にならない場合があります。

そのような場合はPLフィルターを使わないで撮影し、現像で空のコントラストを際立たせる方法が有効です。

【7】

【8】

【9】

ここまでの現象で各オブジェクトのバランスが良くなりましたが、よく見ると空の左右端がやや明るく感じます。

これはレンズ補正の「プロファイル補正を使用」している場合に、自動的に補正される「周辺露光補正」が効きすぎていることによります。

「プロファイル補正を使用」にチェック「✔️」を入れている場合「周辺露光補正」はMax100の半分である50に自動的に調整されます。
(画像7)

周辺露光補正が効きすぎていると感じる場合は「周辺露光補正」のスライドバーをマイナス方向に調整してバランスを取ります。(画像8)

別の方法としては「効果」メニューの「適用量」をマイナスに調整しても似たような効果が得られます。(画像9)

【10】

このように不自然にならない程度に注意しながら全体のバランスを整えて、様々なパラメータを調整して現像の完成度を高めていきます。
(画像10)は現像前のRAWデータと現像完成後の写真を比較できるように並べたものです。

現像作業は慣れないと時間がかかるので、撮り溜めた写真全部を現像していたのでは無限に時間がかかってしまいます。
そこでまずは全体に粗現像を施した段階で、レーティングによりベストショットを絞り込んでから本格的な現象をすれば効率的になるわけです。

※ディテールが十分確認できるなら、粗現像を省略してレーティングから始めても問題ありません。粗現像は暗部のディテールが分かりにくかったりする場合に行えば良いステップです。

デジタルに付き物の「ノイズ」処理

デジタル時代になって比較的容易に夜景撮影が可能となりましたが、様々なノイズに悩まされている方も多いかと思います。
Lightroom Classic CCの「ディテール」メニューにある「手動ノイズ軽減」でかなりノイズを軽減できますが、高度なスキルが必要でした。

ここでは高度なスキルがなくても高品質のノイズ除去が可能なAI「ノイズ除去」機能をご紹介します。

【11】

(画像11)は新倉山浅間公園にある忠霊塔の夜景を撮影したものです。富士山と忠霊塔のパンフォーカスを得るためf/14まで絞ったのでISO640でも125秒の露出時間がかかりました。それでも月光の影になる部分はかなり暗くなっています。

【12】

月明かりでもっと見えていた暗部の表情を出すため、現像モードにして「シャドウ」を+70、「黒レベル」を-20に調整してみます。
(画像12)

【13】

この段階で忠霊塔(五重塔)の右下の暗部を拡大すると様々なノイズが浮き出ています。(画像13)
中でも赤、青、緑のドットは長時間露光撮影すると発生する熱ノイズです。

この時は撮影時間をあまりとれなかったので、撮影時間が2倍になる「長秒時NR(ノイズリダクション)」をOFFにしていました。富士山の登山者による灯りから分かるとおり、夏の夜で気温が高かったので熱ノイズが多く発生しています。

「手動ノイズ軽減」ではこの熱ノイズを消すことはできませんでしたが、AI「ノイズ除去」機能を使えばかなり低減してくれます。
さらに、「手動ノイズ軽減」でノイズ除去を強くかけると輪郭(シャープネス)が甘くなることが避けられませんでしたが、AI「ノイズ除去」ではそれを最小限に抑えてくれます。

【14】

【15】

ディテールメニューの「ノイズ除去」ボタンをクリックすると「強化のプレビュー」画面が現れます。(画像14)
「ノイズ除去」の適用量はデフォルトが50ですが、変更することができます。

その下にある「RAWディテール」は適用を意味するチェック「✔️」が入っていますが、外すことはできません。この「RAWディテール」がノイズ処理で甘くなったディテールを取り戻す機能なのです。

この状態で「強化」ボタンをクリックして、少々長い処理時間を根気良く待つとファイル名の末尾に「-強化-NR . dng」が付加されたノイズ除去されたファイルが追加されます。このdngファイルはカメラメーカーによらないRAWデータのようなもので、RAWデータ同様の高度な現像にも耐えられます。

このdngファイルを拡大するとノイズがかなり綺麗に除去され、厄介な熱ノイズもほとんど除去されているのが分かります。さらに「手動ノイズ軽減」では甘くなりがちな輪郭(シャープネス)もクッキリしています。(画像15)

このように新しいAI「ノイズ除去」機能では少々長い処理時間を待つ必要がありますが、高いスキルがなくても高度にノイズ除去されたデータを得ることができます。
レーティングで得たベストショットに処理しきれないノイズが乗っていたら、このAI「ノイズ除去」を試してみてはいかがでしょうか。

まとめ

前回掲載した「ベストショットを選ぶ」ためのルーチンによって選別したベストショットに完成度の高い現像を施す一例と、最新のAI「ノイズ除去」機能をご紹介しました。

Lightroom Classic CCは自由度が高く、高機能なので様々な現像アプローチが可能です。それだけに高いハードルを感じる方も多いかと思いますが、今回ご紹介した内容を参考としていただきハードルを少しでも下げていただければ幸甚です。

※ここでご紹介した画面はLightroom Classic CC 13.3.1 リリース、Camera Raw 16.3.1 の画面です。バージョンアップにより画面デザインやツールバーが変更されて、今回のご紹介画面と異なる場合があります。
※Lightroom Classic CCはAdobe Inc.(アドビ社)の米国ならびにその他の国における登録商標または商標です。
※Adobe 製品のスクリーンショットは Adobe の許可を得て転載しています。

TAKASHI氏登壇のα7RシリーズとGMレンズを紹介するソニープロカメラマンセミナー

2024年9月21日(土)講師にTAKASHI氏をお招きして、SONYフルサイズミラーレスカメラ”α”の魅力を紹介するセミナーを開催します。その中で今回の記事で紹介したα7R V、α7R IVをメインに使用した風景写真の撮影ポイントや、おすすめのGMレンズの紹介、各レンズの特徴やそのシーン別使用例などをお話いただきます
風景を普段から撮影されている方や、これから撮影を始めてみたいと考えている方にオススメのセミナーです。当日は講師への質問もできますのでこの機会に奮ってご参加ください。

開催場所はカメラのキタムラ 平塚店の他、全国のカメラのキタムラ16店舗でもライブ中継にて開催いたしますので、最寄りの店舗でご参加ください。

【概要と申込み】
■開催日時:2023年9月21日(土)【第一部】11:00~12:00【第二部】14:00~15:00
■費用:無料
■場所:カメラのキタムラ平塚/平塚店、ライブ中継先店舗
■定員:
 □カメラのキタムラ 平塚/平塚店:各部 5名
 □ライブ中継先店舗:下記店舗一覧より希望店舗へお問い合わせください。
■申込み方法
 □下記店舗一覧より希望店舗へお問い合わせください。
■申込み期限:2024年9月20日(金)各店舗営業時間内

【店舗一覧】
 募集状況や申込み、ご質問などは申込み希望店舗へお電話ください。

□リアル開催店舗
■神奈川県:平塚/平塚店

□ライブ中継先店舗
■北海道:札幌/羊ケ丘通り店
■青森県:弘前/高田店
■山形県:山形/馬見ヶ崎店
■茨城県:水戸/下市店
■長野県:松本/渚店
■三重県:四日市/西浦店
■富山県:富山/掛尾店
■京都府:京都/四条西院店
■大阪府:豊中/豊中店
■香川県:高松/高松南店
■岡山県:岡山/下中野店
■佐賀県:佐賀/南部バイパス店
■熊本県:熊本/東バイパス中央店
■福岡県:福岡/ミーナ天神店
■愛知県:名古屋/サカエチカ店
■石川県:金沢/浅野本町店

【TAKASHI氏プロフィール】

2011年から富士山をメインテーマに風景写真を撮り続ける富士山写真家。
主な所ではNational Geographic Traveler誌の2018年6/7月号表紙に採用されSony World Photography Awards 2018日本3位受賞、WPC 2022 (ワールドフォトグラフィックカップ)で日本最高得点を受賞。作品は世界各国のT V番組・写真集・専門誌・カレンダーなどで数多く紹介・掲載されている。
2019年1月銀座ソニーイメージングギャラリー、2020年1月銀座MEGUMI OGITA GALLERY、2023年3月あさご芸術の森美術館、他で写真展を開催。
透明感のある美しいカラー、ダイナミックなコントラストのモノクロ、深みがあり記憶に残るブルーインクシリーズと多彩な作品を世界に発表し続けている。

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