佐藤俊斗 × ポートレートVol.14|ストリートスナップ in Paris

佐藤俊斗
佐藤俊斗 × ポートレートVol.14|ストリートスナップ in Paris

はじめに

皆さんはストリートスナップの経験はありますか?

今回は撮影の仕事でパリに赴くきっかけがあり、撮影の合間に出会った人たちを撮影してきました。

ストリートスナップと聞いて、パリに行く前に日本で思い浮かべていたのは、スタイリッシュな写真というイメージ。

当初はとにかく「画になりそうな格好いい人を撮ろう」と考えていました。

ですが、現地に着いて実際に撮りはじめて感じたのは、地元の人の暖かさやリアルな人の優しさ。

モデルとしてただ撮影するだけでなく、徐々にその人との「距離感」を残したいという気持ちが芽生えてきたのです。

ここでは、建築やパリの美しさを感じられるファッションスナップと、温かみのある風景やその瞬間の切り取りを併せてお届けします。

対比して見てみると、スナップ撮影のその奥深さが垣間見えてくるはずです。

ぜひ最後までご覧ください。

パリでのファッションスナップ

今回は、ブランドの服をその場で着てもらって撮影することが一つのテーマ。

景色はどこも綺麗だったので、服装やモデルさんにあわせてどこで撮影するかは自由なスタイルでした。

事前情報として、この日のパリは真夏日。

パリは夕日になる時間がかなり遅く、22時ごろにようやく暗くなっていきます。

それでは、こちらの写真をご覧ください。

■撮影機材:ソニー α7 IV + FE 70-200mm F4 Macro G OSS II
■撮影環境:1/160秒 f/4 70mm ISO400

6月末の13時ごろに撮影した一枚。コートを身に纏っていることで、より秋らしく涼しげな表情が引き立っていますよね。

特に面白いのが、13時に撮った写真なのにも関わらず、色温度が寒色系で夏らしさがあまりないということ。

パリは時間によって光がかなり変化するので、とても興味深く感じました。

パリの街並みは、黄色いタクシーや緑のゴミ箱など色が特徴的です。ただ綺麗な場所で撮るだけではなく、その場所のリアルさを意識しました。

今回はSonyの望遠レンズ、FE 70-200mm F4 Macro G OSS IIを使用しました。70mmでも背景が圧縮され綺麗なボケ感をつくっています。

実は車が2台分通れる道なんですが、圧縮されているのでかなり細い道のように見えますよね。これが望遠レンズによる圧縮の効果です。

■撮影機材:富士フイルム X100V
■撮影環境:1/200秒 f/5 23mm ISO400

次に、二枚目はFUJIFILM X100Vを使用しました。 

質感の差がご覧いただけるでしょうか。フラッシュを焚き、より臨場感のあるフィルムライクな写真に仕上がっています。

そして一枚目と比べると柔らかい表情で、髪の毛の動きもでています。35度にもなる暑さの中で、ふと「暑かったね」と話した時の一瞬を捉えた一枚。

撮影が一通り終わった後の一枚なのですが、結果的に私はこの写真が一番お気に入りです。

続いての写真をご覧ください。

■撮影機材:ソニー α7 IV + シグマ 24-70mm F2.8 DG DN | Art
■撮影環境:1/125秒 f/4.5 30.4mm ISO200

これは先ほどより時間が経って、20時に撮影したもの。パリの夜の明るさを実感していただけるのではないでしょうか?

ラフな雰囲気があって素敵な女性ですよね。立ってもらうだけで服が映えるので、特に指示はせず撮影しました。

扉のアーチ感や深みのある色味が入ることによっていいバランスになっています。

■撮影機材:富士フイルム X100V
■撮影環境:1/200秒 f/4.5 23mm ISO160

こちらも、二枚目はX100Vを使用して撮影しました。

絵画にさえ見えるこの優しい表情。

撮影の最後には、雰囲気に慣れて柔らかい表情をしてくれていました。抜け感と奥行きの雰囲気がある裏路地で、配達物でさえもなんだかおしゃれに見えますよね。

自然な笑みと、生き生きとした透き通った瞳がとても印象的です。

ロケハン中のストリートスナップ

続いては、ルーヴル美術館をロケハンした時に出会った人々のスナップ写真を紹介していきます。

まず、こちらの写真をご覧ください。

■撮影機材:ソニー α7 IV + シグマ 24-70mm F2.8 DG DN | Art
■撮影環境:1/200秒 f/5 70mm ISO200
■撮影機材:ソニー α7 IV + シグマ 24-70mm F2.8 DG DN | Art
■撮影環境:1/200秒 f/2.8 58.8mm ISO200

印象的な緑の移動車を見つけたので覗いてみると、貫禄のあるエプロン姿の男性が佇んでいました。

ハットにエプロン、青いシャツと青いペン。 

日本では見ないような、パリならではの光景にシャッターを切らずにはいられませんでした。雑多に置いてある段ボールのリアル感や可愛らしいアイスの看板。

一枚目は男性にフォーカスし、目線と表情がわかる一枚。
二枚目は空間の情報として屋根と看板を入れ、仕事中の雰囲気を切り取った一枚です。

どちらもパリらしさを詰め込んだ、雰囲気のある写真ですよね。

■撮影機材:ソニー α7 IV + シグマ 24-70mm F2.8 DG DN | Art
■撮影環境:1/200秒 f/4 28.6mm ISO100

次に、こちらの可愛らしい写真をご覧ください。

私は逆側を向いていたのですが、私たちが撮影をしている時に突然窓が開き、ワンちゃんの顔が飛び出してきたんです。
ワンちゃんが先に顔を出してきた一瞬、女の子が必死に抑えている一枚。

カメラマン的な目線で考えると、扉が開いていた方がとか犬の体がもっと出ていた方が、などと普段なら考えてしまいますよね。

ですが、いい意味でまとまりがなく完璧でないところが、この写真の良さなのではないでしょうか。

「笑ってください」「こちらを向いてください」と指示しているわけでもありませんが、偶然が重なり、予想していない風景とその女の子の表情がとてもいい味を醸し出しています。

パリの街並みとすれ違った人々

■撮影機材:富士フイルム X100V
■撮影環境:1/100秒 f/2 23mm ISO500

続いては、駅の地下鉄でのストリートスナップ。

とても混み合っていたのですが、たまたまエスカレーターから見えてきたご老人の後ろ姿が魅力的だったので切り取ってみました。

動いている時に撮っているので、躍動感がありますよね。

忙しないパリの地下鉄と対照的に、自分のペースでゆっくりと歩いているその姿と、ステンレス感のある無機質な場所に、人間味を感じられるこの独特なバランス感。 

このギャップの美しさは、もう二度と訪れないでしょう。

おわりに

今回はパリでのストリートスナップについての話をしてきましたが、いかがだったでしょうか?

パリならではの文化や、光の温度、時間によって変わる色などがとても魅力的でしたよね。

また、ただ撮るだけでなく「その人の魅力」を撮るという、ストリートスナップの概念を超えた作品づくりを意識していました。

出会った人と対峙して違う角度や感覚でとらえること。その時に初めて「生きた写真」を撮ることができます。

ただ綺麗にかっこよく写真を撮るだけではなく、距離感やその時の想いを「残す」ことが大切なのではないでしょうか。

日本を離れて言語の通じない環境。
偶然出会えた人たちへ感謝の気持ちをこめてシャッターを切った時間は、とても心地いい瞬間の連続でした。

フィーリングや心のわずかな揺れ動きにフォーカスして、皆さんも写真を撮ってみてくださいね。

 

 

■写真家:佐藤俊斗

 

 

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